ドラゴン
2010スペースXの再使用型カプセルのシリーズ。最初は宇宙ステーションへの貨物輸送のためにつくられ、いまは宇宙飛行士も運ぶ。
ドラゴンは、スペースXの再使用型宇宙カプセルである。人を軌道へ運んだ初の商業宇宙船で、軌道から大量の貨物を持ち帰れる唯一の米国の機体でもある。シリーズは2世代ある。ドラゴン1は貨物専用のカプセルで、2010年に初飛行し、2012年から2020年まで国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運んだ。ドラゴン2には、宇宙飛行士用のクルードラゴンと貨物用のカーゴドラゴンがある。どちらもファルコン9ロケットで軌道へ向かう。
ドラゴンとは?
ドラゴンはカプセル型の宇宙船である。円すい形で、パラシュートで着水するタイプの宇宙船で、人と物資を地球低軌道(LEO)へ運び、地球に連れ帰るためにつくられた。乗員や壊れやすい貨物を収める与圧キャビンは再使用でき、トランクと呼ばれる非与圧の下部はかさばる機材を運び、カプセルが大気圏に再突入する前に切り離される。2020年5月30日、クルードラゴンは民間企業がつくった宇宙船として初めて人を軌道へ運び、米国が自国の宇宙飛行士を打ち上げられなかった9年間に終止符を打った。クルードラゴンは最大7席の設計だが、これまでの飛行はすべて4席の構成で行われている。
ドラゴンが生まれた背景
ドラゴンは1つの提案から始まった。スペースXは2006年3月、米航空宇宙局(NASA)の商業軌道輸送サービス(COTS)計画に提案書を出した。COTSは、民間企業なら政府がつくる機体より安くステーションに物資を補給できるという見込みに、NASAが賭けた計画である。NASAは2006年8月18日にスペースXを選び、ドラゴン、ファルコン9、試験飛行をまかなう約2億7800万米ドルの開発資金を与えた。スペースシャトルの退役が近づき、NASAにはISSに物資を届ける別の手段が必要だった。イーロン・マスクはこのカプセルに、歌「パフ(Puff, the Magic Dragon)」にちなんで名前を付けた。自分の宇宙計画を不可能だと言う批評家たちへの冗談である。
仕組み
カーゴドラゴンは、座席、乗員用の表示画面、緊急脱出用のスーパードラコエンジンを省き、クルードラゴンと同じ経路を飛ぶ。ステーションには自動でドッキングする。一方、ドラゴン1はバーシング方式で結合していた。宇宙飛行士がステーションのロボットアームでつかみ、結合口に取り付ける方式である。クルードラゴンはステーションに最長210日間とどまれる認定を受けており、スペースXはどちらのカプセルも繰り返し飛ばしている。最も多く飛んだクルードラゴン「エンデバー」は、2025年8月のクルー11で6回目のミッションに出た。スペースXはNASAと協力し、各カプセルを最大15回の飛行に使えるよう認定を進めている。
ドラゴンの経済学
ドラゴンのコスト面の強みは、再使用と、持ち帰れる貨物にある。軌道へ運び上げる貨物の量(アップマス)は、2世代とも6,000kgで変わらない。しかし帰り道ではこのカプセルに並ぶものがない。最大3,000kgの与圧貨物を地上へ持ち帰り、ステーションでの実験の成果を地球で調べられるようにしている。
再飛行のたびに、カプセルの製造費をより多くのミッションで分け合える。NASAは固定価格契約のもとで、貨物便1回、乗員交代1回ごとに代金を支払い、アクシオムなどの民間の顧客はミッションを丸ごと購入する。そのため、1回の飛行が安くなるほど、スペースXの手元に残る分が増える。
ドラゴンの現状
ドラゴンは、目新しい存在から主力の機体になった。2010年のCOTSデモ飛行1で、民間企業がつくった宇宙船として初めて軌道から回収され、2012年には商業宇宙船として初めてISSに到達した。2020年のデモ2で初めて乗員を運び、それ以来毎年有人飛行を続けている。
2026年2月13日に打ち上げられたクルー12は、クルードラゴンの20回目の有人飛行となり、2026年10月1日のクルー13が21回目となった。その過程でドラゴンは軌道を民間の乗員に開いた。2021年の全員民間人によるインスピレーション4、アクシオムの民間ミッション、そして乗員が初の民間宇宙遊泳を行った2024年のポラリス・ドーンである。
今後の展望
ドラゴンには、ステーションの運用終了時にも役目がある。スペースXはNASAとの契約で、米国の軌道離脱機(USDV)を建造する。2030年に運用を終えたISSを、制御しながら大気圏に再突入させる機体である。それまでは、カーゴドラゴンがNASAの補給便を、クルードラゴンが乗員交代の飛行を続ける。
まとめ
ドラゴンは、2006年にNASAに出した提案を、米国の宇宙飛行士が軌道へ向かう主な手段に育てた。ステーションから大量の貨物を持ち帰れる唯一の機体であり、全員民間人の乗員を初めて軌道へ運んだ。
写真ギャラリー
写真:NASA
年表
- 2006年3月:スペースXが、ドラゴンのカプセル構想を含むCOTSの提案書をNASAに出した。
- 2006年8月18日:NASAがCOTSにスペースXを選び、ドラゴン、ファルコン9、実証飛行のために約2億7800万ドルを与えた。
- 2010年12月8日:COTSデモ飛行1で、ドラゴンは民間企業がつくった宇宙船として初めて、打ち上げ、軌道周回、回収をなし遂げた。
- 2012年5月25日:ドラゴンが商業宇宙船として初めてISSに到達し、結合した。
- 2012年10月:ドラゴンが、NASAの商業補給サービス(CRS)計画のもとで定期的な物資補給を始めた。
- 2019年3月2日:クルードラゴンのデモ1が無人で打ち上げられ、自動でISSにドッキングした。
- 2020年3月7日:CRS-20がドラゴン1の最後のミッションとして飛び、ドラゴン1の機体は運用を終えた。
- 2020年5月30日:クルードラゴンのデモ2がNASAの宇宙飛行士をISSへ運んだ。米国の地からの有人打ち上げは2011年以来だった。
- 2020年11月16日:クルー1が、4人の宇宙飛行士を乗せたドラゴン初の本格運用の有人ミッションとして打ち上げられた。
- 2021年9月:インスピレーション4が、単独で飛行するドラゴンで、全員民間人による初の軌道ミッションを行った。
- 2024年6月:NASAが、2030年以降にISSを降下させる米国の軌道離脱機の建造にスペースXを選んだ。
- 2024年9月:ポラリス・ドーンが初の民間宇宙遊泳をなし遂げた。
- 2026年2月13日:クルー12が、クルードラゴンの20回目の有人軌道飛行として打ち上げられた。
- 2026年10月1日:クルー13が、クルードラゴンの21回目の有人飛行として打ち上げられた。
- 2026年10月8日:クルー12がカリフォルニア州沖に着水した。
出典(9)
- NASA:「NASA Astronauts Launch from America in Historic Test Flight of SpaceX Crew Dragon」(2020年5月30日)
- NASA:「NASA Selects International Space Station U.S. Deorbit Vehicle」(2024年6月)
- NASA:商業乗員輸送計画(Commercial Crew Program)
- スペースX:「Dragon」の機体のページ
- スペースXのXへの投稿:クルー13、ドラゴン21回目の有人宇宙飛行(2026年10月1日)
- ウィキペディア:SpaceX Dragon 1
- ウィキペディア:SpaceX Dragon 2
- ウィキペディア:Crew Dragon Endeavour
- スペースXのXへの投稿:クルー12のドラゴンの着水を確認(2026年10月8日)
