FSDシナリオモデル
このモデルは、テスラの完全自動運転(FSD)のサブスクリプションを、2035年までの各年の売上高と粗利益に換算する。出発点はテスラが公表した数字で、スライダーで価格、保有台数、FSDに料金を払う車の割合を変えられる。
モデルの出発点
テスラが2026年10月21日に発表した2026年第3四半期の資料では、FSD(監視付き)の有効な契約数は174万で、2026年第2四半期の148万から増えた。下のシナリオはまだ6月の水準から出発している。
シナリオを試す
サブスクリプションは年53万件ずつ増え続ける。これは2026年6月30日までの4四半期のペースで、価格は月99ドルのままとする。
サブスクリプションは、2026年6月30日の148万件から2035年半ばの1000万件まで一直線に増える。1000万件は、イーロン・マスクの最高経営責任者(CEO)としての報酬制度「2025年CEO業績報酬」に含まれるFSDの目標である。価格は月99ドルのままとする。取締役会はこの目標を報酬の条件として設定しており、テスラは達成時期を示していない。
本サイトを書いているライアン・タナカが、自分のテスラの試算表で使った前提である。保有台数に占めるFSDの割合は2030年に45%、2035年に80%、価格は2027年に月199ドル、2033年までに499ドルへ上昇、納車台数は2030年まで年18〜23%増とする。このプリセットは2025年の実績から始まり、2026年は99ドルのままとする。
2025年7月の試算表では、2025年の納車台数を178万台と仮定していた。テスラの実際の納車台数は163万6129台だった。
前提
2030年の結果
このシナリオでは、2030年末のFSDサブスクリプションは月99ドルで387万件となり、テスラ車の保有台数1786万台の21.6%を占める。
2030年のFSD売上高は42億8000万ドルとなる。粗利益率70%なら粗利益は29億9000万ドルで、テスラの2025年の全社粗利益171億ドルの18%に当たり、2025年の株式数で希薄化後1株あたり0.85ドルになる。
サブスクリプションは2026年6月から年約53万件ずつ増える。これは2026年6月30日までの4四半期のペースである。
2030年までのサブスクリプション数は、マスクの2025年CEO業績報酬に含まれるFSDの目標、1000万件を下回る。
各期末の数(百万件):2026年6月30日までは実績、その後はシナリオ(破線)
このシナリオでの2026年から2030年までの金額(十億ドル)。破線の枠は売上高、塗りつぶしは粗利益
年ごとの結果
| 年 | 納車台数 | 年末の保有台数 | FSDの割合 | サブスクリプション | 月額料金 | FSD売上高 | 粗利益 | 1株あたり |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026 | 179万 | 1054万 | 16.5% | 175万 | $99 | 16.9億ドル | 11.8億ドル | $0.34 |
| 2027 | 188万 | 1227万 | 18.5% | 227万 | $99 | 23.9億ドル | 16.7億ドル | $0.47 |
| 2028 | 198万 | 1406万 | 20.0% | 281万 | $99 | 30.2億ドル | 21.1億ドル | $0.60 |
| 2029 | 207万 | 1592万 | 20.9% | 333万 | $99 | 36.5億ドル | 25.5億ドル | $0.72 |
| 2030 | 218万 | 1786万 | 21.6% | 387万 | $99 | 42.8億ドル | 29.9億ドル | $0.85 |
感応度分析:2030年末の価格とFSDの割合
| 保有台数に占めるFSDの割合 | $99 | $149 | $199 | $249 | $349 | $499 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 15% | 3.2 | 4.8 | 6.4 | 8.0 | 11.2 | 16.0 |
| 25% | 5.3(このシナリオに最も近い) | 8.0 | 10.7 | 13.3 | 18.7 | 26.7 |
| 35% | 7.4 | 11.2 | 14.9 | 18.7 | 26.2 | 37.4 |
| 45% | 9.5 | 14.4 | 19.2 | 24.0 | 33.7 | 48.1 |
| 60% | 12.7 | 19.2 | 25.6 | 32.0 | 44.9 | 64.2 |
2030年末のFSD売上高の年換算額(十億ドル):年末のサブスクリプション数×月額料金×12カ月で、このシナリオの保有台数1786万台をもとに計算している。枠で囲んだセルがこのシナリオに最も近く(保有台数の21.6%、月99ドル)、このシナリオ自体の年換算額は45.9億ドルである。2026年6月30日時点の年換算額は17.6億ドルだった。
ライアンの前提とテスラの公表値
プリセットCは、ライアンの試算表(バージョン4.4、ファイルの日付は2025年7月29日)の価格と利用率の推移を使い、出発点だけを公表値に置き換えている。下の表は、その出発点が、テスラがのちに公表した数字とどれだけ違っていたかを示す。
| 項目 | 試算表 | 公表値 |
|---|---|---|
| 2025年の納車台数 | 178万台 | 163万6129台、テスラの2025年第4四半期報告 |
| 2025年末時点のテスラ車の累計納車台数 | 884万台 | 890万台、テスラの2025年第4四半期報告 |
| 2025年のFSD価格 | 月149ドル | 月99ドル、テスラのFSDサブスクリプション |
| 2025年末の保有台数に占めるFSDの割合 | 13% | 12.4%(890万台中110万件)、テスラの2025年第4四半期報告 |
| 2026年の納車台数 | 195.8万台 | 9月30日までに132万4681台、テスラの2026年第3四半期の納車台数発表 |
| 2026年の保有台数に占めるFSDの割合 | 年末に19% | 6月30日時点で15.2%(972万台中148万件)、テスラの2026年第2四半期報告 |
| 2026年のFSD価格 | 月199ドル | 月99ドル、テスラのFSDサブスクリプション |
試算表はまた、FSDの粗利益率が2026年の59%から2035年に87%へ上がると仮定していた。プリセットCはほかのプリセットと同じ70%を使うため、3つのプリセットの違いは価格、保有台数、利用率だけである。
テスラが公表していない数字
- テスラはFSDを自動車・サービス売上高の中に計上しているため、モデルには照らし合わせられるFSD売上高の公表値がない。
- テスラはFSDの粗利益率を公表していない。初期値の70%は仮定であり、スライダーは40〜90%の範囲で動く。
- テスラの148万件には、一括購入して毎月の料金を払わないオーナーも含まれる。そのため、サブスクリプション数に99ドルを掛けると、現在の現金売上高を過大に見積もることになる。
- テスラは累計納車台数を公表しているが、現在も走っている車の台数は公表していない。モデルは累計納車台数から出発し、初期設定では毎年保有台数の1.5%を廃車として差し引く。
- テスラの2019年の運転用コンピューター、ハードウェア3(HW3)を搭載した車は軽量版のFSDを使っており、テスラはそうした車が何台残っているかを明らかにしていない。モデルは、すべての車がサブスクリプションに加入できるものとして扱う。
- 米国以外では価格が異なるが、モデルはすべてのサブスクリプションに米国の価格を当てはめている。
モデルの仕組み
- 保有台数は、2025年までに納車されたすべてのテスラ車、888万6139台から始まる。毎年、廃車率のスライダーで設定した割合が減り、その年の納車台数が加わる。
- 2026年の納車台数は179万1813台とする。9月までに納車された132万4681台に、第4四半期の46万7132台を加えた数字で、後者は2026年9月29日にテスラがまとめたアナリスト予想の平均から導いた。2027年以降は、納車台数のスライダーの伸び率で増える。
- 各年末のサブスクリプション数は、保有台数にFSDの割合を掛けたものである。割合は2026年6月30日の15.2%から始まり、プリセットの推移に沿って、スライダーで設定した2035年の値に届くよう伸び縮みする。
- 価格は2026年が99ドルで、その後は価格のスライダーの伸び率で変わる。ただしプリセットCでは、スライダーを動かすまでライアンの価格の推移に従う。
- 各年の売上高は、年初と年末のサブスクリプション数の平均に月額料金を掛け、さらに12カ月を掛けたものである。年末のサブスクリプション数を12カ月分すべてに当てはめると、成長している年の売上高を過大に見積もってしまう。
- 粗利益は売上高に利益率を掛けたものである。1株あたりの数字は、テスラの2025年の希薄化後株式数、35億2800万株で割っている。モデルは粗利益までで止まり、株価や適正価値は示さない。
出典(11)
- テスラの2026年第2四半期報告(米証券取引委員会(SEC)フォーム8-K、添付資料99.1、2026年7月22日)
- テスラの2025年第4四半期報告(SECフォーム8-K、添付資料99.1、2026年1月28日)
- テスラの2026年第3四半期の生産・納車・設置台数(SECフォーム8-K、添付資料99.1、2026年10月2日)
- テスラの2025年の年次報告書(10-K、2026年1月29日提出)
- テスラの2025年の委任状説明書、2025年CEO業績報酬(スケジュール14A、2025年9月17日)
- テスラがまとめた納車台数のアナリスト予想、2026年第3四半期(2026年9月29日)
- Teslanorth:「Tesla investor relations posts Q3 2026 delivery consensus」(2026年9月29日)
- テスラ:FSD(監視付き)のサブスクリプション
- Seeking Alpha:2月14日以降、FSDはサブスクリプションのみに(2026年1月14日)
- Elon, ExplainedのテスラのKPIダッシュボード:2013年以降の四半期納車台数、SECの提出書類と照合済み
- ライアン・タナカのテスラ評価試算表、バージョン4.4(ファイルの日付は2025年7月29日)、「Detailed Valuation」シート(非公開)