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テスラ / テスラのAI推論チップすべての解説
テスラが設計したチップ2個を載せた、テスラの完全自動運転コンピューターの基板写真:Votpuske、CC BY 4.0
テスラ5分で読めます2026年10月

テスラのAI推論チップ

生産中 · 2019年

完全自動運転を車内で動かす、テスラ独自の車載チップ。

テスラのAI推論チップは、テスラのカメラを使う運転支援システム完全自動運転(FSD)を動かす、車内の独自プロセッサーである。推論とは、学習済みのニューラルネットワークを動かしてリアルタイムで判断を下すことだ。データセンターで最初にネットワークを学習させる作業とは別の工程である。テスラは2026年4月に次の推論チップAI5の設計を終えた。イーロン・マスクによると、AI5は車より先に、オプティマスのロボットとテスラのデータセンターで使われる。

テスラのAI推論チップとは

このチップは、車に載った頭脳である。カメラの映像を読み取り、ハンドル、ブレーキと加速をその場で車内で判断する。クラウドに問い合わせる必要はない。チップのファミリーは現在、ハードウェア3(HW3)からハードウェア4(別名AI4)、設計を終えたばかりのAI5、そして計画中のAI6まで続く。車に載る世代が、その車で動かせるFSDの上限を決める。

テスラのAI推論チップが生まれた背景

取り組みは2016年2月に始まった。テスラはチップ設計者のジム・ケラーとピート・バノンが率いる独自チップの開発チームを立ち上げた。きっかけは、自力で立つ必要に迫られたことだった。テスラの画像認識チップの提携先だったモービルアイが2016年に関係を解消したため、テスラは独自チップを設計する間のつなぎとして、エヌビディアのDrive PX 2コンピューターを使うハードウェア2を出荷した。テスラは汎用チップを借りる代わりに、走る車の中でニューラルネットワークを動かすためだけのチップを求めた。自社で設計すれば、コスト、開発ロードマップ、そして自社ソフトウェアとの適合度をテスラが握れる。

仕組み

最初のFSDチップは約18カ月の開発を経て製造に回され、動作するチップとして仕上がった。2019年3月にはモデルSとモデルXで量産搭載が始まった。HW3の基板にはFSDチップが2個載り、並行して動いて互いの結果を照合する。各チップは、ARM Cortex-A72のプロセッサーコア12個と、シストリックアレイ2基を組み合わせている。シストリックアレイとは、ニューラルネットワークが使う計算に合わせて調整した乗算器の格子である。処理速度は大きく伸び、HW3は1秒あたり約2,300枚のカメラ画像を処理した。旧型のHW2.5基板は110枚だった。

どの世代にも通じる最もわかりやすい流れは、プロセスノードである。プロセスノードとは、チップに刻まれる最も小さな回路の大きさを指す。回路が小さいほど、チップは高密度で効率が良くなる。

テスラのチップは微細化を続けている

HW3はテキサス州オースティンのサムスン電子の14ナノメートル工程でつくられ、AI4はサムスンの7ナノメートルに移った。AI6はテキサス州テイラーにあるサムスンの2ナノメートルの製造ラインで生産する予定である。微細化のたびに、1ワットあたりの計算能力が増す。チップが壁のコンセントではなく車のバッテリーで動く以上、これは大きな意味を持つ。

テスラのAI推論チップの経済学

お金の論理は、ドルの記号がなくても単純である。台数(車とロボットの合計)に世代の数を掛け、さらにチップが下す判断1回あたりの下がり続けるコストを掛ける。微細化のたびにテスラのチップコストは下がり、販売できる自動運転の量は増える。この計画は、2025年7月28日に結んだサムスン電子との165億米ドルの契約の柱である。テキサス州テイラーの新工場の2ナノメートルの製造ラインでAI6チップをつくる契約で、テスラは車、ロボットとAIの学習に共通する一つの設計だと説明した。マスクは、この契約額は最低ラインであり、実際の生産量はおそらくその数倍になると述べた。狙いは、判断1回あたりのコストを世代ごとに下げ、外部の半導体メーカーへの依存を減らすことである。

テスラのAI推論チップの現状

2026年10月時点で、新車に載っているのはAI4である。2023年から順次搭載が始まり、プロセッサーコアは20個ある。世代ごとの違いはメモリーにも表れる。メモリーとは、チップがモデルと処理中のデータを置いておく作業スペースのことである。

FSDコンピューターのRAMはHW3からHW4で2倍に

HW3のRAMは8ギガバイトで、AI4はそれを16ギガバイトに倍増させ、ストレージも4倍にした。メモリーが多いほど、車はより大きなFSDのモデルを動かせる。そのためHW3のオーナーには軽量版のFSD v14 liteが提供されている。テスラがAI4向けのソフトウェアを旧型のコンピューターに合うよう蒸留(大きなモデルの知識を小さなモデルに移す手法)したもので、2026年第2四半期に配信を始めた。HW3とHW4の開発を率いたピート・バノンは、2025年8月にテスラを離れた。

今後の展望

AI5は2026年4月15日にテープアウトした。完成した設計が工場に渡ったという意味である。2026年第2四半期の決算説明会で、マスクは2027年の量産開始を望んでいると述べた。テスラはAI5を2社の半導体メーカーで同時に製造する。TSMC(最初は台湾、その後アリゾナ)とサムスン電子で、供給元を2つ確保できる。マスクは2025年9月、AI5がAI4からどれだけ進むかを説明した。

AI5がAI4を上回る点

最も大きく伸びるのはメモリー容量で、生の計算能力がそれに続く。マスクは2026年4月、AI5チップ1個で、AI4チップ2個の基板の約5倍の実用的な処理ができると述べた。2026年10月には、オプティマス向けのコストを下げるため、AI5の計画メモリーを144ギガバイトから96ギガバイトに減らした。これによりグラフのメモリーの差は縮まる。AI5の次はAI6で、テスラの2026年1月の決算資料では2028年に生産を予定している。マスクは2025年11月にこう投稿した。

まとめ

テスラは提携先との関係解消をきっかけに、10年にわたって独自チップを開発してきた。いまでは一つのチップファミリーが車、ロボットとデータセンターにまたがる。AI4が現在走っている車とロボタクシーを動かし、AI5はまずオプティマスとテスラのデータセンターに使われる。AI6は2028年に、サムスン電子のテキサス工場で生産する計画である。

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年表

  • 2016年2月:テスラが、ジム・ケラーとピート・バノンのもとで独自AIチップの設計チームを結成。
  • 2016年:モービルアイがテスラとの提携を解消。テスラはエヌビディアのDrive PX 2を使うつなぎのハードウェア2を出荷。
  • 2017年:約18カ月の開発を経て、最初のFSDチップの設計が完了し製造に回される。
  • 2019年3月:テスラがモデルSとモデルXでFSDチップ(HW3)の量産出荷を開始。
  • 2023年3月:改良型モデルSとモデルXでハードウェア4(AI4)の搭載が始まる。
  • 2025年7月28日:テスラがテキサス州テイラーでAI6チップをつくる165億ドルの契約をサムスン電子と結ぶ。
  • 2025年8月:HW3とHW4の開発を率いたピート・バノンがテスラを離れる。
  • 2025年9月:イーロン・マスクが、AI5の生の計算能力はAI4の約8倍、メモリーは9倍と説明。
  • 2026年1月28日:テスラの2025年第4四半期の決算資料で、AI5の生産を2027年、AI6を2028年と計画。
  • 2026年4月15日:AI5がテープアウト。イーロン・マスクは、最初のチップをオプティマスとテスラのデータセンターに回すと説明。
  • 2026年10月:イーロン・マスクがAI5の計画メモリーを144ギガバイトから96ギガバイトに変更。
出典(13)
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