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スペースX / マーリンエンジンすべての解説
スペースXのホーソーン工場に並ぶマーリン1Dエンジンと、エンジンを取り付けるオクタウェブ写真:Steve Jurvetson、CC BY 2.0、トリミング
スペースX4分で読めます2026年第4四半期

マーリンエンジン

2006

スペースXのファルコン9を動かす、自社開発のシンプルなエンジン。

マーリンはスペースXが開発した液体燃料ロケットエンジンのシリーズで、軌道への安価な輸送を現実にした主力エンジンである。精製したケロシンであるRP-1を液体酸素(LOX)とともに燃やし、スペースXが2000年代初めに自社で設計した。ファルコン9の第1段では、海面用のマーリン1Dエンジン9基が「オクタウェブ」と呼ばれる円形の配置で一斉に噴射する。上段では、真空用に調整したマーリン・バキュームが1基で推進を担う。

マーリンエンジンとは

マーリンはガス発生器サイクルのロケットエンジンである。燃料を少しだけ抜き出してポンプを回し、そのガスを機外に捨てる「オープン」型の設計だ。ファルコン1、ファルコン9、ファルコン・ヘビーを動かしている。現行のマーリン1Dは1基あたり海面で約845キロニュートン(kN)、19万ポンド力(推力約86トン)の推力を出し、推力を大きく絞ることもできる。

マーリンエンジン誕生の背景

理由は技術より先にお金にあった。スペースXには第1段用のエンジンが必要だったが、既存のエンジンの高い価格は払いたくなかった。そこで同社は、安くて単純なエンジンを自社でつくった。ガス発生器サイクルは高度な二段燃焼サイクルのエンジンより効率で劣るが、はるかに簡単かつ安くつくれる。スペースXは燃料と酸化剤を混ぜる部品であるピントル噴射器も、1960年代に実績を積んだアポロ月着陸船の降下用エンジンから取り入れた。初期には、技術者が主要部品を鋳造アルミニウムから、より丈夫なニッケル合金インコネルに切り替え、高温に耐えられるようにした。

仕組み

ピントル噴射器が2つの役割を担う。マーリンは最大出力から40%まで推力を絞ることができ、この幅のおかげでファルコン9のブースターは燃え尽きずに着陸できるまで減速できる。推力のわりに軽く、推力重量比は150対1を超える。

1基あたりの海面推力は、2006年のマーリン1Aの約340kNから、2013年にファルコン9 v1.1でマーリン1Dが登場した時点で654kNに、さらに2018年のファルコン9ブロック5で約845kNに伸びた。同じ基本設計のまま、当初の約2.5倍になった計算である。

マーリン各型の海面推力

上段用のエンジンには大きな違いが1つある。海面用のノズルを真空向けに形を整えた大きなベル型ノズルに替えると、同じ心臓部で比推力(Isp、エンジンの燃費を示す指標で、単位は秒)が約66秒伸び、海面の282秒から真空の348秒に上がる。この大きなノズルが、軌道までの長い上昇でエンジンの真価を発揮させる。

真空用ノズルで効率が66秒向上

マーリンエンジンの経済学

計算を変えるのは再使用である。2026年10月までに、スペースXの集計ではファルコンのブースター着陸は約666回に達し、ブースターB1067は2026年8月25日に過去最多となる37回目の飛行をした。9基のエンジンのコストを30回以上の飛行で割れば、1回あたりのエンジンコストは打ち上げ費用のごく一部に縮む。同じ考え方は事業全体に通じている。大量生産、年々増える再使用、下がり続ける単価が打ち上げ事業を支え、その打ち上げがスペースX自身のスターリンク衛星も運んでいる。

マーリンの現状

マーリンは現在、史上屈指の生産数と飛行回数を誇るロケットエンジンである。スペースXは年に最大約500基をつくり、9基のエンジンを積むファルコン9の第1段は、離陸時に海面推力の合計で7.6MN(推力約775トン)を超える力を出す。2025年、ファルコンロケットは過去最多の165回飛行した。

今後の展望

マスクは、マーリンが後継エンジンでは並べないかもしれない記録を今も持っていることを率直に認めている。マーリンを推力重量比と推力あたりコストの世界記録保持者と呼び、メタンを燃やすラプターは効率では上回るものの、まさにこの2つの指標では及ばない可能性があると懸念を示している。現時点では、マーリンはスペースXの年間100回を超える打ち上げで飛び、ラプターはより長期的なスターシップ計画を担っている。

まとめ

マーリンは、単純で安く、再使用できるエンジンが、1ドルあたりの飛行回数で高度なエンジンを上回れることを示した。これまでに700回を超えるファルコンの打ち上げで飛んでいる。

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年表

  • 2003年:テキサス州マクレガーでマーリン1A試作機の燃焼試験が始まり、マーリンの開発が本格化する。
  • 2004年:技術者が主要部品を鋳造アルミニウムから耐久性の高いインコネルに切り替え、この変更はマーリン1の設計に引き継がれる。
  • 2006年3月24日:オメレク島から打ち上げたファルコン1の初飛行でマーリン1Aがデビューする。飛行は離陸直後に終わる。
  • 2007年11月:スペースXがマーリン1Cの開発を完了する。125回を超える試験で合計3,000秒以上の燃焼を重ね、最後はマクレガーでの170秒間の認定燃焼試験で締めくくった。
  • 2008年9月28日:マーリン1Cがファルコン1の4号機を軌道に運ぶ。民間が開発した液体燃料ロケットとして初の軌道到達となる。
  • 2008年12月:軌道到達から約3カ月後、スペースXがNASAの商業補給サービス(CRS)契約を約16億米ドルで獲得する。
  • 2010年6月4日:9基のマーリン1Cエンジンが、ケープカナベラルからのファルコン9 v1.0初の軌道打ち上げを支える。
  • 2011年:推力と効率を高める再設計として、マーリン1Dの開発が始まる。
  • 2013年:マーリン1Dと9基のエンジンを並べるオクタウェブ配置が、ファルコン9 v1.1でデビューする。
  • 2015年12月:出力を高めたマーリン1Dエンジンと冷却した推進剤を使うファルコン9フルスラストがデビューする。
  • 2018年5月11日:ファルコン9ブロック5がデビューし、マーリン1Dは1基あたり約845kNとなる。
  • 2026年8月25日:ブースターB1067が過去最多となる37回目の飛行をし、スターリンク衛星29基を運ぶ。
出典(6)
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