2000年、イーロン・マスクは急成長するオンライン決済会社(まもなくペイパルと呼ばれる会社)の最高経営責任者(CEO)だったが、その秋の取締役会での交代劇で職を離れた。その後も持ち続けた株が、スペースXの資金になった。
取締役会での交代劇
イーロン・マスクは1999年、オンライン銀行X.comを立ち上げた。2000年、X.comは競合のコンフィニティと合併した。コンフィニティは人気の決済ツール「ペイパル」をつくった会社で、ピーター・ティールとマックス・レブチンが率いていた。マスクは合併後の会社の最高経営責任者に就いたが、合併後の社内は張り詰めていた。どの技術を土台にするか、X.comとペイパルのどちらの名前を残すかで争いが起きた。2000年秋、マスクが延び延びになっていた新婚旅行と資金集めのために海外へ向かう機内にいる間に、経営陣と取締役は動き、ピーター・ティールを最高経営責任者に据える決議をした。マスクは交代の知らせを旅の途中で受け取った。
会社を去らなかった理由
最高経営責任者の座を外された創業者は、反撃するか株を売って去ることが多い。しかしイーロン・マスクは取締役会に残り、筆頭株主であり続け、経営を離れた後も事業を支えた。会社の株を持ち続けたことで、その持ち株が次の事業の資金になった。
スペースXとテスラを築いた売却益
2002年、ネット通販大手のイーベイがペイパルを買収し、イーロン・マスクの持ち株は税引き前で約1億7600万ドルになった。15億ドルの買収額のうち、マスクの持ち分11.7%にあたる額である。マスクはその大半をスペースX、テスラ、ソーラーシティに投じた。ソーラーシティはいとこたちが経営していた太陽光発電の会社で、のちにテスラの一部となった。
まとめ
イーロン・マスクは2002年3月、イーベイの買収が完了した同年10月より数カ月前にスペースXを設立していた。2004年にはテスラの最初の資金調達ラウンド750万ドルのうち650万ドルを出資し、取締役会長に就いた。
年表
- 1999年:イーロン・マスクがオンライン銀行X.comを設立する。
- 2000年春:X.comがペイパルをつくったコンフィニティと合併し、マスクが最高経営責任者に就く。
- 2000年秋:延び延びになっていた新婚旅行と資金集めのためにマスクが海外へ向かう間に、取締役会がマスクをピーター・ティールに交代させる。
- 2002年:イーベイがペイパルを買収し、マスクが持ち続けた株は税引き前で約1億7600万ドルになる。マスクはこれをスペースXに、のちにテスラに投資する。
出典(3)
- ウォルター・アイザックソン『イーロン・マスク』(原書2023年、Simon and Schuster)、X.comとペイパルの章
- アシュリー・バンス『イーロン・マスク 未来を創る男』(原書2015年、Ecco)
- エリック・ジョーゲンソン『The Book of Elon』(2024年)