2006年、イーロン・マスクはテスラが存在する理由として1つの使命を掲げた。化石燃料から持続可能なエネルギーへの移行を早めることである。この使命が、テスラの車、ソーラー製品、家庭用蓄電池パワーウォール、電力会社向けのメガパックを結びつけている。マスクが描くエネルギーの仕組みは3つの要素でできている。電気をつくる太陽光発電、電気をためる蓄電池、人と物を運ぶ電気自動車(EV)である。テスラがそれ以来出荷してきたすべての製品が、このどれかを担っている。
持続可能なエネルギーへの移行とは
イーロン・マスクはこの移行を、石炭、石油、ガスを掘り出して燃やす経済から、クリーンな電気で動く経済への転換と説明している。マスクの描く姿ははっきりしている。太陽光などの再生可能エネルギーで電気をつくり、夜や風のない日にも使えるよう蓄電池にため、その電気でEVを走らせる。どの要素も他の要素に支えられている。蓄電池のない太陽光発電では日没後に電力網を動かせず、EVが汚染を減らせるのは、充電する電気がクリーンな場合に限られる。
マスクがこの考え方を重視する理由
マスクは2006年のマスタープランに、「テスラ・モーターズの最大の目的(そして私がこの会社に資金を出している理由)は、掘って燃やす炭化水素経済から太陽光による電気の経済への移行を早める手助けをすることである」と書いた。マスクは、この移行はいずれ起きるもので、テスラの役割はそれを早めることだと論じてきた。同じプランには資金の手当ての方法も書かれていた。まず少量生産の高価な車をつくり、その利益でより安い車を、さらに量販車をつくり、その過程でクリーンな発電も提供するというものである。使命と事業計画は同じ文書に書かれていた。
実際の進め方
テスラの3つの製品群が3つの要素に対応している。ソーラーパネルとソーラールーフが電気をつくる。パワーウォールは家庭で、メガパックは電力網で電気をためる。モデル3やモデルYからセミトラックまで、テスラの車両がその電気を使って人と貨物を運ぶ。2016年の「マスタープラン・パート2」は、テスラが「蓄電池を違和感なく組み込んだ見事なソーラールーフをつくる」ことと、「EVの製品ラインを広げ、すべての主要セグメントをカバーする」ことを掲げた。2023年のマスタープラン第3部は目標を数字で示した。経済を完全に電化するには、世界で約240テラワット時(TWh)の蓄電池と30テラワット(TW)の再生可能エネルギーの発電能力が必要になるという。
Master Plan 3, the path to a fully sustainable energy future for Earth will be presented on March 1. The future is bright! https://t.co/11ug0LRlbD
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裏付けとなる数字
テスラの実績は、使命が前に進んでいることを示している。最も速く伸びたのは蓄電池で、設置量は2020年の約3ギガワット時(GWh)から2025年には46.7GWhに増えた。5年で15倍を超えた計算である。
テスラの車両納車台数は、2020年の約50万台から2023年には180万8581台に増え、2025年には163万6129台を納車した。
マスタープラン第3部は、完全な移行に必要な製造投資は約10兆米ドルで、世界が今後20年間に化石燃料へ費やす見通しの約14兆ドルより少ないとも論じた。
テスラ全体に広がる現在の取り組み
2026年、この使命はテスラ全体を同時に貫いている。テスラは2026年の最初の9カ月で36.0GWhの蓄電池を設置し(四半期ごとに8.8GWh、13.5GWh、13.7GWh)、世界でのパワーウォールの設置台数は100万台を超えた。メガパック工場は、太陽光と蓄電池を組み合わせた発電所を建てる系統運用者に製品を供給し、スーパーチャージャー網も充電を通じて同じ目標につながっている。2025年9月、テスラはマスタープラン第4部を公表し、使命を人工知能(AI)とロボットにもとづく「持続可能な豊かさ」として描き直した。2017年12月、イーロン・マスクは、太陽光と蓄電池は伸び率で見れば車よりはるかに速く成長すると予測していた。
@IamSamCrompton Sustainable energy production with solar and batteries will grow much faster than auto on a percentage basis. That will be a big focus next year, with primary remaining Model 3 ramp.
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今後の展望
マスタープラン第3部の目標が事業機会の大きさを示し、蓄電池の設置量が過去最高となったテスラの2025年が規模拡大の土台になる。次の段階は規模の拡大である。再生可能エネルギーを支えるメガパックの生産能力を増やし、蓄電用と車載用の電池をより安くし、ソーラーと充電設備を広げる。
まとめ
2006年のプランが行き先を示し、2023年のプランがその費用を約10兆ドルと見積もった。3つの要素のうち最も速く伸びたのはテスラの蓄電池事業で、新しいメガパック工場ができるたびに、プランが求める規模へと近づいていく。
年表
- 2006年8月2日:イーロン・マスクが「テスラ・モーターズの秘密のマスタープラン」を公表し、炭化水素経済から太陽光による電気の経済への移行をテスラの目的に掲げる。
- 2015年4月30日:テスラがパワーウォールとパワーパックでテスラ・エナジーを立ち上げ、使命を車からクリーンな電気の貯蔵へと広げる。
- 2016年7月20日:イーロン・マスクが「マスタープラン・パート2」を公表し、ソーラーと蓄電池の一体化、車種の拡大、自動運転を打ち出す。
- 2019年7月29日:テスラが電力会社向けのメガパックを発表する。再生可能エネルギーの出力を安定させるための系統用蓄電池である。
- 2023年3月1日:テスラがインベスター・デーでマスタープラン第3部を発表し、完全に持続可能な世界のエネルギー経済への道筋を数字で示す。
- 2023年4月5日:テスラがマスタープラン第3部の白書を公表し、240TWhの蓄電池、30TWの再生可能エネルギーの発電能力、約10兆ドルの投資が必要だと示す。
- 2025年9月1日:テスラがマスタープラン第4部を公表し、使命をAIとロボットにもとづく持続可能な豊かさとして描き直す。
- 2025年12月31日:テスラの通年の蓄電池設置量が過去最高の46.7GWhに達し、通年の車両納車台数は163万6129台となる。
- 2026年10月:テスラが第3四半期の蓄電池設置量を13.7GWhと報告し、年初からの合計は36.0GWhとなる。
出典(12)
- テスラ:「The Secret Tesla Motors Master Plan」(2006年8月2日)
- テスラ:「Master Plan, Part Deux」(2016年7月20日)
- テスラ:マスタープラン第3部の白書(2023年4月5日)
- テスラ:マスタープラン第4部(2025年9月1日)
- テスラ:「Introducing Megapack」(2019年7月29日)
- テスラ:「1 Million Powerwalls Installed」
- テスラ2025年第4四半期の生産台数、納車台数、蓄電池の設置量
- 米証券取引委員会(SEC):テスラの2026年第1四半期の生産台数と設置量(フォーム8-Kの添付資料)
- テスラ:2026年第2四半期アップデート(2026年7月22日)
- SEC:テスラの2026年第3四半期の生産台数と設置量(フォーム8-Kの添付資料)
- SEC:テスラの2023年第4四半期・通期アップデート(フォーム8-Kの添付資料)
- SEC:テスラの2021年第4四半期の生産台数と納車台数(フォーム8-Kの添付資料)