VOICE試験は、筋萎縮性側索硬化症(ALS、筋肉を動かす神経が壊れていく病気)、脳卒中、脊髄損傷で話せなくなった人の発話機能を取り戻すための、ニューラリンクの治験である。米国で行うニューラリンクのインプラント治験3件の一つで、ほかにコンピューター操作のPRIMEとロボットアーム操作のCONVOYがある。

VOICE試験とは?
VOICEは、米国政府の治験登録サイトClinicalTrials.govに試験番号NCT07224256で登録されている。PRIMEと同じ硬貨ほどの大きさの脳コンピューターインターフェース(BCI)であるN1インプラントを使い、意図したカーソルの動きの代わりに、話そうとした言葉をデコード(読み解き)する。2025年5月、米食品医薬品局(FDA)はニューラリンクの発話機能回復装置にブレークスルー・デバイス指定を与えた。FDAの審査を早められる指定である。
VOICE試験が生まれた背景
PRIMEは、重いまひのある人でも、ワイヤレスのインプラントでコンピューターを操作できることを示した。次の経路は発話である。話せなくなった人にとって、考えをそのまま言葉にする直接の道があれば、画面で文字を打つ状態から会話に加わる状態へと変わる。ニューラリンクが掲げる目標は、普通の会話の速さである毎分140語である。
仕組み
PRIME試験では、インプラントは脳の手を担う領域の信号を拾う。VOICEでは、スレッド(電極の糸)を発話の運動野に入れる。唇、舌、声帯の動きを計画する脳の帯状の領域である。参加者はキーを押し、声に出すつもりで文を思い浮かべ、もう一度キーを押して送る。ソフトウェアが信号を言葉に変え、参加者が話せなくなる前の録音から再現した声がそれを読み上げる。スレッドを埋め込むのは手術ロボットのR1である。
VOICE試験の経済学
インプラント、ロボットと発話ソフトウェアは治験中の機器であり、価格は付いていない。ニューラリンクは各参加者と介助者1人の機器、手術と治験のための移動の費用を負担する。
VOICE試験の現状
治験は2025年10月3日、ダラスのテキサス大学サウスウェスタン医療センターで始まった。ALSを患う元救急救命士のケネス・ショックは、2026年1月5日にそこでインプラントを埋め込んだ。発話から先に症状が出る球麻痺型のALSを患うテレンス(テリー)・マンダブルは3人目のVOICE参加者で、そのインプラントは3,000チャンネルを備える。以前の機器の1,024チャンネルの約3倍である。2026年9月16日、ニューラリンクは、テリーが再現した自分の声で妻に「愛している」と伝える動画を投稿し、2日後には全編を公開した。ニューラリンクの共同創業者で社長のDJ・ソは、この声はSpaceXSI(スペースXの人工知能(AI)部門)のAIモデルGrokが学習し生成したものだと述べた。
今後の展望
次に注目される数字は、VOICEが初めて公表する毎分の語数の結果と、それが会話並みの目標にどこまで近づくかである。PRIMEの参加者は同じ系統のインプラントで、指の動きを思い浮かべることで、すでに毎分最大40語を入力している。
まとめ
VOICEは、手ではなく声を対象にしたニューラリンク初の治験であり、開始から1年以内に初めての公開成果を出した。
年表
- 2025年5月:FDAが、ニューラリンクの発話機能回復装置にブレークスルー・デバイス指定を与える。
- 2025年10月3日:ダラスのテキサス大学サウスウェスタン医療センターでVOICEが始まる。
- 2025年11月:VOICEがClinicalTrials.govに試験番号NCT07224256で初めて掲載される。
- 2026年1月5日:ケネス・ショックがインプラントを埋め込む。
- 2026年9月16日:ニューラリンクが、テリー・マンダブルが再現した声で妻に「愛している」と伝える動画を投稿。9月18日に全編の動画を公開。