アメリカPACは、イーロン・マスクが共和党候補を支援するため2024年5月に設立したスーパーPACであり、最初の選挙期で米国有数の規模の政治資金団体になった。スーパーPACとは、候補者の陣営と連携しないことを条件に、候補者の支援や反対のために無制限に資金を集めて使える政治活動委員会(PAC)である。アメリカPACは2024年5月22日、選挙資金を監督する米連邦選挙委員会(FEC)に登録した。
アメリカPACとは?
アメリカPACは「独立支出専門」の委員会であり、これがスーパーPACの正式な呼び名である。候補者に資金を渡す代わりに、自ら広告、戸別訪問、有権者への働きかけの費用を払う。候補者は法律上、上限のある少額の献金しか受け取れないためである。委員会の拠点はテキサス州オースティンにあり、会計責任者にはクリス・ヤングの名がある。掲げる価値観は、安全な国境、安全な都市、良識ある政府支出、公正な司法制度、言論の自由、そして自衛の権利である。
アメリカPACが生まれた理由
マスクがアメリカPACをつくったのは、2024年の大統領選で共和党候補、とりわけドナルド・トランプを資金と戸別訪問の人員で後押しするためである。マスクは2024年7月13日、ペンシルベニア州バトラーでの暗殺未遂事件から約30分後に、トランプ支持を表明した。
I fully endorse President Trump and hope for his rapid recovery https://t.co/ZdxkF63EqF
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仕組み
アメリカPACの支出は主に2つに分かれる。独立支出(候補者の支援や反対を明示した広告や郵便物)は、2024年の選挙期に1億7370万ドルに達した。運営支出(組織の運営費)は合計8750万ドルだった。
運営予算の多くは現場活動に充てられた。アメリカPACが、ペンシルベニア州やミシガン州などの激戦州でトランプ陣営の戸別訪問の主力を担ったためである。ペンシルベニア州では請願署名者に100ドルを支払い、激戦州で請願書に署名した登録有権者を対象に、毎日100万ドルを贈る企画も実施した。2024年11月4日にフィラデルフィアで開かれた審理で、PACの弁護士は各当選者が有償の広報担当者として選ばれたと説明し、裁判官は投票日までの継続を認めた。
Every day, from now through Nov 5, @America PAC will be giving away $1M to someone in swing states who signed our petition to support free speech & the right to bear arms! We want to make sure that everyone in swing states hears about this and I suspect this will ensure they do.
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アメリカPACを支える資金
アメリカPACの資金はほぼすべてマスクが出しており、2024年7〜9月だけで約7500万ドルを拠出した。2023〜2024年の選挙期には収入2億6350万ドル、支出2億6130万ドルを報告し、2024年に最も多く支出したスーパーPACの上位に入った。
現在のアメリカPAC
2024年の選挙後、アメリカPACは2025年4月1日のウィスコンシン州最高裁判事選挙に取り組んだ。この州の選挙では、スーザン・クロフォードがPACの推したブラッド・シメルを破って当選した。2025年5月、マスクは政治への支出を大きく減らす考えを示した。委員会は2025〜2026年の選挙期について、2026年6月30日までに収入5030万ドル、支出5230万ドルを報告している。このうち独立支出は約8万7000ドルで、2025年4月の下院補欠選挙で当選したフロリダ州の共和党議員2人を支援した。
2026年7月、状況が変わった。マスクが、少なくとも8州で戸別訪問、デジタル広告、ダイレクトメールを行う中間選挙の現場活動に1億〜1億2000万ドルを承認したのである。9月23日までにPACは広告に370万ドル超を支出し、その大半はデジタル広告と動画配信の広告だった。対象はアラスカ、アイオワ、メイン、ミシガン、オハイオ各州の上院選である。10月上旬のFEC報告書によると、テキサス州上院選でも、ケン・パクストンを支援しジェームズ・タラリコに反対する郵便物の費用を払っている。
今後の展望
次の節目は2026年11月3日の中間選挙であり、アメリカPACは2024年の戸別訪問のモデルを上院選で生かす。
まとめ
アメリカPACは、マスクの資金を2024年有数の規模の独立支出活動に変えた。支出はマスクの優先順位に沿って動いており、2025〜2026年の選挙期の最初の18カ月は連邦選挙への支出を控え、2026年7月から中間選挙の現場活動に乗り出した。
年表
- 2024年5月22日:アメリカPACがスーパーPACとして米連邦選挙委員会に登録する。会計責任者はクリス・ヤング。
- 2024年7月13日:イーロン・マスクがXでドナルド・トランプ支持を表明する。
- 2024年10月15日:FECへの提出書類で、マスクが7〜9月にアメリカPACへ約7500万ドルを拠出したことがわかる。
- 2024年10月19日:マスクが、PACの請願書に署名した激戦州の有権者に毎日100万ドルを贈る企画を発表する。
- 2024年11月4日:PACの弁護士が各当選者は有償の広報担当者として選ばれたと説明し、フィラデルフィアの裁判官が企画の継続を認める。
- 2024年11月5日:ドナルド・トランプが大統領選挙で勝利する。
- 2025年4月1日:ウィスコンシン州最高裁判事選挙で、スーザン・クロフォードがPACの推したブラッド・シメルを破って当選する。
- 2025年5月:マスクが、政治への支出を大きく減らす考えを示す。
- 2026年6月30日:この日までのFEC報告書で、2025〜2026年の選挙期にアメリカPACが連邦選挙の候補者にほとんど支出していないことがわかる。
- 2026年7月:マスクが、少なくとも8州で行う中間選挙の現場活動に1億〜1億2000万ドルを承認する。