コロッサス1は、xAIのチャットボットを動かすAI、Grokを学習させるスーパーコンピューターである。テネシー州メンフィスにある延べ約7万3000m²(約78万5000平方フィート)の旧エレクトロラックス家電工場に収まった1台の巨大な機械で、2024年9月、エヌビディアの主力の画像処理半導体H100を10万個積んで稼働した。画像処理半導体(GPU)は、現代のAIを支える大量の並列計算を担う専用チップである。第1期は着工から完成まで122日で建設された。イーロン・マスクはこれを、世界で最も強力なAI学習システムと呼んだ。
コロッサス1とは?
コロッサス1は、AIの学習クラスターである。数万個のGPUをつなぎ、1台の巨大なコンピューターとして動かす仕組みだ。役割は1つで、xAIのアシスタントの中で文章を読み書きするAI、大規模言語モデル(LLM)のGrokシリーズを学習させることである。その後、2つ目の拠点であるコロッサス2を含む、より大きな計算設備群の中核になった。
コロッサス1が生まれた背景
xAIが参入したAI開発競争には、資金力のある競合がすでにひしめいていた。大規模言語モデルは主に、より多くのデータを、より多くのチップで、より長く学習させるほど性能が上がる。その差を早く縮めるため、xAIには非常に大きなクラスターが必要で、しかもそれを素早く手に入れる必要があった。データセンターを一から建てれば何年もかかることがある。そこでチームは、重工業向けの電力設備と広い床をすでに備えた閉鎖済みの工場を引き継ぎ、数カ月のうちに最初の10万個のGPUを稼働させた。
仕組み
コロッサス1は1台の機械というより、すべてが1つの頭脳として考えなければならない、緻密に編み上げられたGPUの網に近い。各サーバーは、エヌビディアのSpectrum-Xイーサネットで毎秒3.6テラビットのデータをやり取りする。xAIが特殊な方式より標準的なネットワーク技術を選んだ結果である。システム全体のメモリー帯域は合計で毎秒194ペタバイトに達し、ストレージは1エクサバイト(10億ギガバイト)を超える。難しいのは電力の供給である。学習中はチップが一斉に負荷を上げ下げするため、消費電力が大きく揺れる。そこでxAIは拠点にテスラのメガパックを組み合わせ、電力の引き込みをならした。
地域の電力網も、それに合わせて増強する必要があった。テネシー川流域開発公社(TVA)が承認し、地元の公益事業体メンフィス・ライト・ガス・アンド・ウォーターを通じて供給される電力は、2024年11月に150メガワットで始まり、2026年2月に2度目の承認が下りて300メガワットに倍増した。
チップの構成も、建物が埋まるのと同じ速さで変わった。マスクは20万個のGPUへの拡大を示したとき、その中身を具体的に説明した。当初のH100に新しいH200を加え、その後の拡張ではBlackwell世代のGB200を上乗せするというものである。
コロッサス1の経済学
チップは世代が新しくなるたびに値段が上がり、1ドルあたりにこなす仕事も増える。この規模のクラスターは、稼働した瞬間から価値が下がり始める。そこでxAIは2026年5月、その時点でH100、H200、GB200を合わせて22万個を超えていたコロッサス1を、Claudeを開発するアンソロピックに開放し、Claude ProとClaude Maxの利用者向けの処理能力を増やした。古いクラスターは安定した収入源になり、最新の学習作業はBlackwellベースのコロッサス2に移った。Grokを学習させてきたチップが、いまは直接の競合にもサービスを提供している。2026年6月には、グーグルが約11万個のエヌビディア製GPUを使う対価として、2026年10月から2029年6月まで月約9億2000万ドルをスペースXに支払うことで合意した。6月末までに、スペースXが結んだクラウドサービス契約は141億ドルに達した。建設全体の費用は数百億ドル規模にのぼる。
コロッサス1の現状
コロッサス1は10万個のGPUで稼働を始め、数カ月でほぼ倍増した。マスクは2026年9月下旬、コロッサス1のGPUは約23万個(H100が15万個、H200が5万個、GB200が3万個)、コロッサス2は約55万個で、合わせて約78万個になると述べ、100万個を目指す計画を示した。コロッサス1に承認された電力網からの電力は300メガワットである。スペースXの四半期決算によると、2026年9月30日時点で同社のAI計算能力は合計1.7ギガワットだった。
今後の展望
Grok 5は、エヌビディアのBlackwell世代のGB200とGB300を積んだコロッサス2で学習中である。xAIは2026年1月8日、ミシシッピ州サウスヘイブンに3つ目のデータセンターを設けると発表した。投資額は200億ドルを超え、MACROHARD(マクロハード)にちなんでMACROHARDRRと名付けられた。マスクによると、これでコロッサスの学習用計算能力は約2ギガワットに達する。アンソロピックとの契約では、数ギガワット規模の軌道上の計算設備、つまり宇宙に置くデータセンターへの関心にも触れていた。
まとめ
コロッサス1は、空き家になった家電工場をxAI初の学習クラスターに変えた。2026年にはアンソロピックがこれを借り、Grokの最新の学習はコロッサス2に移った。
年表
- 2024年6月5日:xAIがコロッサスの計画を公表し、建設地としてテネシー州メンフィスを挙げた。
- 2024年9月2日:イーロン・マスクが、H100を10万個積んだクラスターの稼働を発表した。着工から完成まで122日だった。
- 2024年11月7日:テネシー川流域開発公社(TVA)の理事会が、拠点への150メガワットの電力供給を承認した。
- 2024年12月:クラスターがエヌビディアのH200を加え、約20万個のGPUに向けて拡張した。
- 2025年2月19日:コロッサスで学習したGrok 3がベータ版として公開された。
- 2025年7月:Grok 4とその派生モデルが、20万個を超えるGPUのクラスターで学習した。
- 2025年9月17日:イーロン・マスクが、コロッサス2を世界初のギガワット級AI学習クラスターとして紹介した。
- 2026年1月8日:xAIが、ミシシッピ州サウスヘイブンに200億ドル超を投じるデータセンター、MACROHARDRRを発表した。
- 2026年2月11日:TVAの理事会が150メガワットの追加を承認し、コロッサス1の電力網からの電力は300メガワットに倍増した。
- 2026年5月6日:xAIが、アンソロピックにコロッサス1(22万個超のGPU)の利用を認める提携を発表した。
- 2026年6月5日:グーグルが、2026年10月から2029年6月まで約11万個のGPUを使う対価として、月約9億2000万ドルをスペースXに支払うことで合意した。
- 2026年6月30日:スペースXが四半期報告書で、1.4ギガワットのAI計算能力を報告した。
- 2026年9月30日:第3四半期決算によると、スペースXのAI計算能力が1.7ギガワットに達した。
- 2026年9月25日:イーロン・マスクが、コロッサス1のGPUは23万個、コロッサス2は55万個だと報告した。
出典(11)
- イーロン・マスクのXへの投稿:H100を10万個積んだ学習クラスター、コロッサスが122日で稼働(2024年9月2日)
- xAI:「Colossus: The World's Largest AI Supercomputer」
- xAI:「Grok 3 Beta: The Age of Reasoning Agents」(2025年2月19日)
- Action News 5:TVAがxAIの施設への電力供給を承認(2024年11月7日)
- WSMV:TVAがxAI向けの電力増強を承認(2026年2月12日)
- ミシシッピ州のテイト・リーブス知事室:xAIがサウスヘイブンに200億ドル超を投資(2026年1月8日)
- xAI:「New Compute Partnership with Anthropic」(2026年5月6日)
- PYMNTS(ロイター通信を引用):スペースXがグーグルと複数年のクラウド契約を獲得(2026年6月)
- TelecomLead:スペースXの2026年第2四半期決算、AI計算能力1.4GWとクラウド契約141億ドル(2026年8月5日)
- 米証券取引委員会(SEC):スペースXの提出書類(フォームS-1は2026年5月20日、目論見書は2026年6月11日、フォーム10-Qは2026年8月4日)
- イーロン・マスクのXへの投稿:コロッサス1とコロッサス2のチップ数(2026年9月25日)