
マスクが自分の内面について語ることはめったにない。そのため2021年、全米に生放送されるコメディー番組のステージに立ち、落ち着いた様子でアスペルガー症候群であることを観客に伝えたとき、視聴者は驚いた。
語った内容
マスクは2021年5月8日、長寿の生放送コント番組『サタデー・ナイト・ライブ』(通称SNL)の司会を務めた。冒頭のモノローグでは「今夜の僕は、アスペルガー症候群の人間として初めてSNLの司会を務めるという歴史をつくっているんだ。少なくとも、それを認めた最初の人間だ」と述べた。その夜は共演者とあまり目を合わせないだろうと冗談を言い、自分は「人間をエミュレーションモードで動かすのはかなり得意なんだ」と語った。観客は笑ったが、マスクは自分についての本当のことを話していた。
アスペルガー症候群の意味
米国精神医学会は2013年、アスペルガー症候群を自閉スペクトラム症(脳の発達の仕方が生涯にわたって多くの人と異なる特性)に統合し、米国の医師はこれを独立した診断名として使わなくなった。この特性をもつ人は、知能は平均的か高いことが多く、特定の関心事に深く集中する傾向がある。また、人の表情や合図の読み取り、視線の合わせ方、雑談への対応が多くの人と異なる。診断を受けた人の多くは、これを脳の配線の違いと表現し、苦労する分野がある一方で、はっきりした強みをもつ分野もあると語る。マスクは生放送のテレビでこの名前を口にし、同じ経験を一部共有しているかもしれない数百万人の前に、身近な経験として示した。
自分の脳をどうとらえているか
マスクは自分の脳の特性を強みとしてとらえている。一つの問題に何時間も、何年も集中し続けられる力、システムや機械がどう組み合わさるかに引きつけられる性質、そして難しい問いを投げかけるのをやめさせようとする周囲の圧力を気にしない姿勢を、この特性と結びつけている。普通の会話を難しくしているのと同じ特徴が、高度なエンジニアリングの仕事を楽にしているとも示唆している。
まとめ
マスクがSNLでアスペルガー症候群を公表した場面は短く、笑いにあふれ、私生活を明かさない人物としては珍しく率直なものだった。マスクはこの場面で、自身のニューロダイバージェンス(脳の働き方が一般的なパターンと異なること)を、ものづくりのやり方の一部として示した。
年表
- 2013年5月:米国精神医学会が『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版(DSM-5)を刊行し、アスペルガー症候群を自閉スペクトラム症に統合する。
- 2021年5月8日:イーロン・マスクが『サタデー・ナイト・ライブ』の司会を務め、モノローグでアスペルガー症候群であると語る。
出典(3)
- イーロン・マスクのモノローグ、『サタデー・ナイト・ライブ』、NBC放送、2021年5月8日(一次資料)
- 米国精神医学会:『精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM-5)
- ウォルター・アイザックソン『イーロン・マスク』(2023年)、Simon and Schuster